キャンベルタウンは、ウイスキーの首都と言われていたほどウイスキー造りが盛んな土地でした。
最盛期には30を超える蒸留所があり活気に満ちていた街も、産業の変化には逆らえませんでした。
蒸留所も次々と閉鎖を余儀なくされ、ついには1軒にまでなってしまいます。
しかし2000年代に入り徐々に蒸留所復活の機運が高まり、復活の兆しを見せています。
キャンベルタウンの特徴を簡単に・・・
- ウイスキーの首都
- ブリニーと言われる港町特有の潮の香り
- 蒸留所は3軒
ウイスキーの首都とも言われるキャンベルタウンの特徴と蒸留所を紹介します。
キャンベルタウンモルトの特徴
ロケーション
キャンベルタウンはグラスゴーの西、キンタイア半島の先端に位置する人口5千人弱の小さな港町です。
産業の中心は観光で、ウイスキー造りが復活してきたこともあって、年間5千人を超える観光客が蒸留所に訪れるとのこと。
キャンベルタウンへのアクセスはフェリーが車ですが、グラスゴーなどの大都市からは時間のかかる「陸の孤島」となっています。
多くの観光客にとってキャンベルタウンは宿泊前提の旅行となるため、ウイスキー産業だけでなく、ホテル業・飲食業にも少なからず経済効果があるんですね。
画像引用元 https://marinas.com/view/marina/x1cgp4_Campbeltown_Harbour_Marina_Campbeltown_Argyll_United_Kingdom
歴史
「ウイスキーの首都」とまで言われたキャンベルタウンは、1800年代中頃から1900年代中頃までの約1世紀にわたり栄華を極め、最盛期には30を超える蒸留所がありました。
ウイスキー産業を筆頭に漁業・炭鉱・造船・農業などが発展し、スコットランド中から一攫千金を狙って多くの人が移り住み大成功を収めた人たちも多く、お金持ちの多い裕福な街でした。
この当時の人口は、わずか2000人弱というから驚きです!
人口2000人の街にウイスキーの蒸留所が30もあったの⁉
そんな絶好調のキャンベルタウンにも衰退の時がやってきます。
主な原因は・・・
- 最大の得意先である禁酒法時代のアメリカへ粗悪品を密輸し、ブランド力が低下した
- 世界大恐慌や世界大戦の影響
- 輸送手段が船から航空機・自動車に変わり貿易の中心地でなくなった
- 石炭の需要減少・枯渇
一番の原因は、得意先であるアメリカの信用を失ったこと。
禁酒法が施行されていたアメリカでは密造酒や密輸されたウイスキーの販売が横行していました。
キャンベルタウンをはじめとするスコッチメーカーは、こぞってアメリカへ輸出していましたがキャンベルタウンでは大量の需要をさばくため、ウイスキーの品質を落として対応していました。
安かろう悪かろうとなったキャンベルタウン産のウイスキーは、禁酒法が廃止されると見向きもされなくなり衰退の道を歩みます。
ついには、従来の製造方法をかたくなに守り抜いたスプリングバンク蒸留所を除いて、全ての蒸留所が閉鎖に追い込まれてしまいます。
キャンベルタウンに復活の光が見え始めるのは2000年代に入ってから。
グレンスコシア蒸留所とグレンガイル蒸留所が再開され、徐々にではありますが生産量が増えている事実は今後の希望が持てますね!
蒸留所紹介
スプリングバンク蒸留所
スプリングバンク蒸留所は1826年、キャンベルタウンで14番目の蒸留所として設立されました。
以降、不遇の時代には街で唯一の蒸留所となりましたが閉鎖することなく操業を続けています。
近年は、蒸留所復活にも注力していて、後述するグレンガイル蒸留所の建設をはじめ、ロングローやヘーゼルバーンなど過去に閉鎖された蒸留所の名を冠したウイスキーを発売しています。
ツアーは£10(1,500円程度)から開催されています。
ツアーはこちらから。
また、2021年には新しく”WASH BACK Bar”がオープンし、ウイスキーの試飲・購入はもちろん食事も楽しめるスペースとなっています。
ウイスキーメニューはスプリングバンク・ロングロー・ヘーゼルバーンに加えて、グレンガイル蒸留所のキルケランの各種も販売しています。
ここまで揃っていれば十分ですね!
スプリングバンク
スプリングバンクは現在では多くの蒸留所で廃止されている、フロアモルティングを採用している数少ない蒸留所です。
軽くピートの風味をまとわせ、糖化を経て木製のウォッシュバックに移され最大110時間かけて発酵され、蒸留は2.5回です。
スタンダードボトルであるスプリングバンク10年はアルコール度数46度、バーボン樽60%・シェリー樽40%でボトリングされています。
味わいはブリニーでフルーティー。スパイシーな風味も併せ持つバランスのとれたウイスキーです。
ロングロー
ロングローは、かつてスプリングバンク蒸留所の隣で操業していた蒸留所からとったブランドで、最初のリリースは1973年。
ラインナップとして加えられたのが1990年代になってからです。
このラインナップはヘビーピートに仕上げており、蒸留は2回。
スタンダードボトルのロングローピートは、ヘビーピートなウイスキーでバーボン樽・シェリー樽が使われています。
味わいは濃厚でクリーミー、そして包み込むようなスモーキー感。
ヘーゼルバーン
ヘーゼルバーンもかつてキャンベルタウンで操業していた蒸留所から受け継いだブランド名で、1997年にリリースされました。
ヘーゼルバーン蒸留所といえば、日本ではおなじみの”マッサン”こと、竹鶴政孝氏がリタさんとの結婚後キャンベルタウンに住みながら実習をしていた蒸留所ですね!
この実習で「竹鶴ノート」が完成しジャパニーズウイスキーの基礎が作られたと思うと、心が躍りますよね!
当時の味を再現しているかは、分かりませんが是非飲んでみたいブランドです。
こちらは、ノンピートモデルで3回蒸留。
ローランドを思わせる洗練された味わいになりそうですね。
スタンダードボトルである、ヘーゼルバーン10年はバーボン樽100%でボトリングされています。
3回蒸留の効果でエレガントで洗練された味わいに加え、バーボン樽特有のハチミツとバニラの甘い風味が楽しめます。
グレンガイル蒸留所
この路地を奥に進むとスプリングバンク蒸留所やグレンガイル蒸留所の建物があります。
かなり雰囲気出てるね!
グレンガイル蒸留所は、スプリングバンク蒸留所のオーナー一族であるミッチェル家が再興した蒸留所です。
蒸留所の場所もスプリングバンク蒸留所の隣にあり、麦芽や熟成庫などを共有しています。
元々の蒸留所は1872年から1925年まで操業していました。
復活したのが2004年ですから、実に79年ぶりの出来事でした。
グレンガイル蒸留所は「キルケラン」というブランド名でウイスキーをリリースしています。
水源は蒸留所の南にあるクロスヒルロック湖。
麦芽はスプリングバンクと同じものを使用していますが、軽くピートで香りづけされており、15ppmのフェノール値を計測しています。
ピート感は軽めではないでしょうか。
発酵は72時間~110時間かけて行い、2回蒸留したのち主にシェリー樽とバーボン樽で熟成されます。
ツアーは、スプリングバンク蒸留所とほぼ同じ内容になっており、キルケランツアーとして£10(1,500円程度)で開催しています。
ツアーはこちら
キルケラン
スタンダードボトルである8年は、軽いピート香に加え青りんごやバニラの風味とキャンベルタウン特有の塩味(ブリニー)が味わえます。
ラインナップは12年の他にシェリー樽を使ったボトルもあるようなので、リリースされている種類は豊富です。
グレンスコシア蒸留所
グレンスコシア蒸留所は、1832年に設立されました。
このころのキャンベルタウンには29の蒸留所が建ち並び、作られたウイスキーは蒸気船に乗せて一大消費地であるグラスゴーまで、たった9時間で運ばれていたそうです。
ちなみに、現在はバスで4時間半の道のりです。遠いですねぇ~
1930年には生産休止に追い込まれ、その後幾度となくオーナーが入れ替わり安定した生産ができませんでしたが、2014年大規模な設備投資を実施し、生産は安定しつつあります。
蒸留所ツアーは、£10(1,500円程度)で開催されており、ツアーの最後にダブルカスクシングルモルトウイスキーのテイスティングができます。
また、ショップテイスティングでは£25(4,000円程度)から4種類のウイスキーのテイスティングができます。
ビジターセンターも2014年の改修できれいに整備されていますので、思い出になること間違いなしです!
ツアーはこちらから。
ダブルカスクシングルモルトウイスキー
スタンダードボトルであるダブルカスクは、バーボン樽で熟成させシェリー樽で仕上げています。
キャラメルのような甘みとフルーティーな香りのウイスキーで、バニラの甘さとスパイシーな風味も楽しめます。
このモデルはノンエイジですが、ビンテージは15年から揃っており限定リリースもされているので、BARなどで見つけることができるかもしれません。
まとめ
キャンベルタウンはウイスキーの首都とも呼ばれ、”マッサン”こと竹鶴政孝氏も実習した伝統のある地域です。
しかし時代の流れによるウイスキー産業の衰退の影響を受けてしまい、当時の面影はありません。
そんな中でもウイスキー造りの火種を絶やさずに守り抜き、現在に伝えている関係者の方々の努力と情熱は想像を超えるものだったでしょう。
街の栄枯盛衰に思いを馳せながら、関係者の皆様に感謝しつつ、キャンベルタウンモルトをおいしく頂きましょう!
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