アイラ島と並んで、スコッチウイスキーの聖地とされるスペイサイド。
スコットランドにある蒸留所の半数はここ、スペイサイドにあります。
ウイスキー初心者におすすめのスペイサイドモルトの特徴と、代表的な蒸留所をご紹介します。
どの蒸留所も特徴的なウイスキーですのでおススメです!
スペイサイドモルトの特徴を簡単に・・・
- 初心者でも飲みやすい
- 優雅で華やか、フルーティーな香り
- コスパ重視タイプから超高級ウイスキーまでそろっている
私たち女性はアイラよりスペイサイドの方が飲みやすいかも
スペイサイドモルトの特徴
ロケーション
スコットランドの北部、ハイランド地域の北東部を流れる、全長172キロメートルのスペイ川流域をスペイサイドと呼んでいます。
スペイ川は、スコットランドでは2番目の長さを誇りサーモン漁なども盛んな川です。
このスペイサイド地区にスコットランドにあるモルトウイスキー蒸溜所の約半数が集中していて、その数なんと50カ所以上!
最近は日本でもウイスキーブームですが、世界的にもウイスキーブームとなっており、スペイサイドでも新興の蒸留所建設が計画されています。
歴史
スペイサイドは、良質な水・豊富な大麦畑・ピート・冷涼な気候とウイスキー造りに必要な条件がそろっていたため、古くからウイスキー造りが盛んでした。
当初は各家庭などで小規模に、余った麦を使ってウイスキーを作っていましたが、味が良く評判になると農業よりも利益が出るようになり、本格的な蒸留所を立ち上げます。
1707年、イングランドがスコットランドを併合すると、イングランド政府はスコッチに重い税金をかけます。
ウイスキーが生活の一部となっていたスコットランドの人々は、なんとかしてスコッチを守ろうと考え、いわゆる密造という手段でウイスキーの製造を続けます。
なるべく人目につかない谷間などに蒸留所をつくり、木の樽に入れて保管・運搬していました。
そしてその結果、ウイスキーが琥珀色になり、木の香りや潮の香りを取り込み複雑な味わいとなる「熟成」を発見しました。
スペイサイドは、ハイランド地方の中でも一大消費地であるローランドに比較的近いということもあり、密造の一大拠点になっていきました。
そんな中1824年、グレンリベット蒸留所が初めて政府公認の蒸留所として登録し、密造酒時代は終わりを告げます。
そして約200年経った今もスペイサイドは、スコッチウイスキーの一大拠点として発展し続けています。
スペイサイドの蒸留所紹介
スペイサイドは狭い地域ですが、いくつかの地区に分かれて特徴的な蒸留所がひしめき合っています。
地区の分け方は色々ありますが、当サイトでは、山間部・丘陵地帯である上流地域、大麦畑が広がる穀倉地帯である中流地域、比較的海に近い下流地域に分けてご紹介します。
それぞれに特徴がありますので、自分の感覚を信じて「これだ!!」と思ったウイスキーからチャレンジしてみるのも面白いですよ!
今回、ご紹介できなかった蒸留所のファンの方がいらっしゃったら、申し訳ございません。
コメントを頂ければ、テイスティングをしっかりした上で、別記事でご紹介します!
上流地域
上流地域は、山間部で丘陵や渓谷が多い内陸の地域です。
山からの冷涼な風や上質な水が豊富で、古くからウイスキー造りで栄えた地域です。
ザ・グレンリベット蒸留所
「すべてのシングルモルトはここから始まった」とうたわれる政府公認第1号の蒸留所で、グレンリベットとは静かな谷という意味。
地下200メートルから湧き上がる良質な水と冷涼で安定した気温で、古くから良質なウイスキーを生産しています。
生産量・流通量も世界有数をほこり、コストパフォーマンスにも優れたウイスキーです。
特徴は、華やかな香りとフルーティーな味わい。ハチミツとドライフルーツのような甘みが広がり、クリーミーな口当たり。
ピーティー感がないのも特徴です。
ビジターセンターは、上の写真のように立派で豪華な設備です。
ここで、ウイスキーを飲めたら幸せな気分に浸れること間違いなしですね!
ツアーは£20(3,000円程度)から実施されています。
ツアーはこちらから。
トーモア蒸留所
トーモア蒸留所は、1958年に建てられた蒸留所です。
建築デザインが目を引く蒸留所で、設計したアルバート・リチャードソン卿はナイトの称号を得ている建築家。
ロンドンを中心に数々の建築に携わっています。
リチャードソン卿は、新古典主義とモダニズムを組み合わせた建築様式で知られており、トーモア蒸留所の建築デザインである、石造りのバルコニーと緑色に風化した銅の屋根がみごとに庭園とマッチしています。
この蒸留所は残念ながらビジターセンターやショップは併設していませんが、この建築を見るだけでも訪れる価値はあるでしょう!
現在リリースしているウイスキーは14年と16年の2種類です。
14年は、なめらかでフルーティーな味わいで、フィニッシュは少しスパイシー。
アメリカンオーク樽を使用しています。
16年は、濃厚なフルーツとバニラの香り、少しドライな印象。
こちらもアメリカンオーク樽を使用しています。
どちらも生産量は限られているようですので、見つけたらチャレンジですね!
クラガンモア蒸留所
クラガンモア蒸留所がリリースするクラガンモア12年は、UD社が提唱する「クラシックモルトシリーズ」のスペイサイドを代表するウイスキーです。
クラッシックモルトシリーズとは、ユナイテッド・ディスティラーズ(UD社)が1988年に提唱したスコッチ・シングルモルトウイスキーのシリーズです。スコットランドの各地域のウイスキーが6本選ばれており、初心者でウイスキー選びに迷ったときは頼りになる存在です。
- ダルウィニー (ハイランド 内陸)
- オーバン (ハイランド 海沿い)
- グレンキンチー (ローランド)
- ラガヴーリン (アイラ島)
- クラガンモア (スペイサイド)
- タリスカー (アイランズ)
設立は1869年でスペイ川のほとりに建つ蒸留所です。
生産されたウイスキーの大部分は、オールドパーやホワイトホースなどのブレンデッド用のモルトとして出荷されるため、シングルモルトとしての流通量は多くはありません。
ディアジオ傘下だけあって、他のディアジオ傘下の蒸留所と同じくビジターセンターなどの設備は豪華で、充実していますね!
ツアーは£16(2,500円程度)で実施されており、他の蒸留所同様、3種類のテイスティングができるツアーです。
ツアーはこちらから。
中流地域
中流地域は、スペイ川を中心に大麦畑などの穀倉地帯が広がっています。
この地域も、上質な水と大麦によって評判の良いウイスキーが古くから作られてきました。
グレンフィディック蒸留所
グレンフィディック蒸留所は1887年12月25日に蒸留を開始しました。
意味はゲール語で「鹿の谷」。ボトルにも牡鹿がデザインされています。
現在のオーナーであるウィリアム家が創業当時から変わらずオーナーを続けているファミリー経営の蒸留所ですが、なんと2015年まではグレンフィディックが世界で1番売れているシングルモルトウイスキーでした。
もちろん、現在も世界有数の売り上げを誇る蒸留所です。
世界有数の生産能力を有する蒸留所のポットスチルが並んでいる光景は圧巻ですね!
蒸留所は、ダフタウンの中心地から少し北、バルヴェニー城のそばにあります。
蒸留所周辺はきれいに整備され、まるで公園のようになっています。
ビジターセンターやショップも充実しており、見学ツアーは満足できるとはおもいますが、WEBサイトからツアーのページを確認できませんでした。
情報を見つけ次第、更新しますね。
グレンフィディックはスーパーでも見かけるウイスキーなのでリーズナブルで普段飲みに最適ですね!
バルヴェニー蒸留所
バルヴェニー蒸留所はグレンフィディック蒸留所と同じ敷地にあり、もちろん経営者も同じです。
グレンフィディックのウィリアム家が1892年に設立し、1893年5月に生産を開始しています。
バルヴェニーのウイスキーは、熟成樽にこだわって作られており、それぞれに違いを出しています。
12年はシェリー仕上げ。
一方、14年はラム樽で仕上げハチミツの風味を豊かにしています。
このほかに、アメリカンオークやポートウッドで仕上げたモデルもあり、種類が豊富です。
グレンフィディックはどちらかというと入門用、バルヴェニーは初心者を卒業したころに挑戦したいウイスキーですね。
こちらはツアーの情報を見つけましたので、ご紹介します。
£50(8,000円程度)のコースで所要時間が2.5時間ですので、時間に余裕をもって計画してくださいね。
ツアーはこちらから。
アベラワー蒸留所
アベラワー蒸留所は、1826年に設立され現在の建物になったのは1879年です。
設計したのは、蒸留所の設計で有名なチャールズ・ドイグで、ヴィクトリア朝の美しい建物となっています。
アベラワーの街の雰囲気も素晴らしいですね!
ウイスキーは、オロロソシェリー樽とアメリカンオーク樽で熟成されたダブルカスクがメインになっています。
レギュラーボトルの12年は、リンゴの風味が豊かでフルーティーな甘みが余韻として残る、リッチな味わいです。
シェリー樽といえば、アベラワーと言われるように、シェリー樽入門に最適な蒸留所ですね。
2022年7月現在、蒸留所ツアーは休止中ですが早い段階で再開されそうですので、再開されたら情報をUPします!
臨時休業のお知らせです。
早くツアー始めてほしいですね!
ザ・マッカラン蒸留所
シングルモルトのロールスロイスと評されるマッカランは、1824年ザ・グレンリベット蒸留所に次いで政府公認の蒸留所となりました。
現在の蒸留所は、2018年5月に6年の歳月と£1億4,000万(約230億円)の資金を投入して作られました。
施設内はもちろん見学可能なのですが、他の蒸留所とは一線を画す施設で、まさにテーマパークです。
建物自体も、近未来的なデザインでマッカランのイメージにぴったりな施設です。
スコットランドに行ったら外せないスポットですね!
ザ・マッカラン蒸留所の特徴は、厳選された素材と原木からこだわった熟成樽でしょう。
特に熟成樽は、ヨーロピアンオークとアメリカンオークを自社で管理しており、シェリー酒を18か月漬け込み完成します。
蒸留所ツアーは£50(8,000円程度)から開催されており、テイスティングを体験したあとは、マッカランBARへ案内されるそうです。
ツアーはこちらから。
気分がハイな状態で案内されたら、お金あるだけ使いそう…
クレカ持っていくと危ないね笑
グレンファークラス蒸留所
グレンファークラス蒸留所は、創業者のジョン・グラントが1865年に農場と蒸留所を£511.19sdで購入したところから始まります。
ジョン・グラントは蒸留所の経営を当時有名なウイスキー職人だったジョン・スミスに任せました。
ジョン・スミスは、クラガンモア蒸留所の創設者ですが、マッカランやグレンリベットなどスペイサイドのあらゆる蒸留所のマネージャーを務めていた人物です。
ジョン・スミスが蒸留所の基礎と方向性を定めたことで、グレンファークラスは様々な困難を乗り越え、今なお創業当時から5代続く家族経営が出来ているのかもしれません。
グレンファークラスの水は、蒸留所裏のベンリネス山からのピート層を通った雪解け水を利用しています。
また、熟成樽にはオロロソシェリーに使用されたヨーロピアンオークのシェリー樽を使用しています。
ウイスキーの特徴は、シェリー樽の特性を活かしたフルーティーで華やかな味わいです。
ビジターセンターやショップも充実しており、ツアーは£7.5(1,200円程度)と破格の値段です!
テイスティングルームも豪華です!
この値段でテイスティング付き!
しかもこの設備!行くしかないでしょ!
ツアーはこちらから。
下流地域
下流地域は、中流地域よりさらに開けた土地で、大麦を大量に栽培できました。
また、海にも近く鉄道も早くから整備されたことで、多くのウイスキーを大都市に輸送することができ発展しました。
グレングラント蒸留所
グレングラント蒸留所は1839年、ローセスという街でグラント兄弟が設立しました。
この場所は、上質な水源と大麦が豊富にあり、港にもアクセスしやすく立地に恵まれた場所でした。
1886年に整備されたビクトリア朝の庭園は素晴らしく、蒸留所ツアー後の散策コースとなっています。
蒸留所の特徴は、首が長く細いポットスチルと精溜器で1880年代に開発し初めて使用しました。
この精溜器によって、スペイサイドのウイスキーがライトでフルーティーな味わいになっていきました。
現在はイタリアのカンパリ社が所有していることもあり、イタリアでは超有名ウイスキーメーカーです。
ウイスキーのテイストは、フローラルでフルーティ。洋ナシやリンゴ、ドライフルーツの甘みや香りが広がります。
ツアーは、£7.5(1,200円程度)で参加できるので機会があれば是非行ってみて下さい!
ツアーはこちらから。
ベンリアック蒸留所
ベンリアック蒸留所は1898年に設立されましたが、操業開始からなんと2年後の1900年操業停止に追い込まれます。
次に蒸留が開始される1965年まで隣にあるロングモーン蒸留所のモルティングを行っていたという過去があります。
ちなみに、ロングモーン蒸留所は「マッサン」で有名な日本ウイスキーの父、竹鶴政孝氏が1週間の研修を行った蒸留所です。
初めてシングルモルトウイスキーをリリースしたのが1994年ですので、どちらかというと新興の蒸留所です。
ここから攻めの経営を開始し、今ではフロアモルティングの再開、ノンピート・ピーテッド2種類のシングルモルトのリリースなどを行っています。
熟成樽にも違いを見せており、オリジナル10はバーボン樽・シェリー樽・バージンオークを使用し、スモーキー10にはバーボン樽・ジャマイカラム樽・トーストしたバージンオークを使用しています。
オリジナルツアーは所要時間75分、£20(3,000円程度)で実施しており3種類のテイスティングが楽しめます。
ツアーはこちらから。
グレンマレイ蒸留所
グレンマレイ蒸留所はエルギンという街の東端に建っており、設立は1897年です。
同年9月13日に蒸留を開始しましたが、それまではビールの醸造所(ブルワリー)でした。
1987年には年間200万リットルに生産量を増強しています。
グレンマレイのウイスキーは、ラインナップが豊富でクラシックというラインだけで6種類。
ヘリテージ(エイジ10年~)で5種類がそろっています。
熟成樽の違いや、ノンピート・ピーテッドなどによって豊かなバリエーションになっています。
クラシックはとてもお求めやすい価格で提供されているので、普段飲みに常備されるのをおススメします。
ツアーも格安で£7(1,000円程度)で2種類のテイスティング付きという、大盤振る舞い!
安いからと飲みすぎには注意ですね!
ツアーはこちらから。
まとめ
スペイサイドは多くの蒸留所がありますが、基本的には華やかでフルーティーな味わいです。
万人受けするテイストですので、普段飲みからご褒美、贈答品までオールマイティに活躍できます。
ぜひ、当サイトをご参考頂きお気に入りの1本を見つけてみて下さい!
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